前回は、アクションラーニングという手法を使うと複雑な問題が解決できるということをお話ししました。問題を抱えている人の「思い込み」がはずれることで、問題解決するのだということでしたね。
人間は、自分の心を守るために「思い込み」を抱えるのでしょうね。
「この仕事は自分でどうにかしなきゃならないけど、どうにもしようがない」
こんな「思い込み」を抱えている人がそれを手放すためには、普通、少し痛みが伴うものです。
「誰かに相談しても助けてもらえないかもしれない」
そんな風に思うと、相談するのが怖くなり、ますます、「自分でどうにかしなきゃ」と思い込むようになります。助けてもらえなかった時の失望感とか、拒絶されたような感覚が怖いのですよね。傷つきたくないから、相談できない。つまり、やはり自分の心を守るために「思い込み」を抱えているのです。
けれど、アクションラーニングを使うと、傷つくことなく、思い込みがはずれることがあります。なぜそんなことが起きるのか、順にご説明したいと思います。
意見を言わず、質問するか質問に答えるだけ
アクションラーニングのセッションは、約50分間の問題解決のための会議です。このセッションには、重要なルールがあります。
- 意見を言ってはいけない
- 質問をするか、質問に答えるかだけで話し合う
いかがですか?
「意見を言ってはいけない」という会議、考えられますか?
私もアクションラーニングを学び始めた頃は、このルールにすごく違和感を感じ、上手く話し合うことができませんでした。それまでは、会議というのは、お互いの意見を言い合う場だと思っていたからです。
一方で、これまでの経験の中で、会議中に、声の大きい人が自分の意見を話しまくり、生産的な意見交換は行われず、時間ばかりが経つような、非生産的な会議が多いことも分かっていました。
- 意見を言ってはいけない
- 質問をするか、質問に答えるかだけで話し合う
実は、このルールを適用して対話を進めると、最初は、意見を言えないので苦しく感じるかもしれないですが、質問力がついてくると、だんだん良い対話ができるようになります。
意見を言えないことで、相手の話を聴くようになる
アクションラーニングのセッションでは、自分から意見を言えないので、質問をするしか、話し合いに参加する方法はありません。
どんな質問をしようかと考えるため、相手の言っていることを理解しようという意識が働いてきます。これにより、お互いの話を「傾聴」できるようになるのです。
最初は上手い質問を考えられず、ずっと質問ができないままでいることもあるかもしれませんが、これは、質問力をつける上で、非常に良い訓練になります。
どうですか? それでも、やはり意見を言いたいですか?
意見で言うと、相手は、拒否感を持つ
話し合っている最中に、相手が「それは違うよ」などと言おうものなら、「何が違うんだ! そっちこそ間違っている!」と言い返したくなりませんか?
私たちは、否定されるような意見を言われると、自然と拒否感を持ち、反発したくなります。これは、自分を守りたいという自然な心の作用なのですね。
一方で、
「なぜ、そう考えたの?」
と質問され、自分の話を聞いてくれたらどうでしょうか?
受け止めてもらえているという安心感が起こり、相手との間に自然な信頼関係が生まれますね。
つまり、意見を言っても、相手は聞いてくれないのです。
子供に「勉強しなさい」と言えば言うほど、反抗的になるのと同じですね。
素直な質問をすると、ひらめきが起きる
意見がダメだからといって、質問ならなんでも良いかというと、そうでもありません。
「そうなったのは、あなたが〇〇だったからなんじゃないですか?」
なんていう質問は、ものすごく誘導的ですよね。意見を言われて批判されているのと変わりありません。
では、どんな質問をすれば良いのかというと、もっと素直に疑問に思うことを聞いていけばいいのです。
「困っているようだけど、そもそも、それって、やらなきゃならないことなの?」
「その時、どんな気分だったの?」
「〇〇って、なぜ〇〇なんですか?」
相手が「当たり前」と思っていることが、「不思議だな。なぜ当たり前なんだろう?」と思うことってありますよね。そこを素直に聞くのです。これは、できるだけ嫌味なく聞いてください。「それは非常識でしょ」のような意見が隠されている質問ですと、言葉に出さなくても相手に伝わってしまいます。
素直に疑問に思うことを聞いていると、不思議と相手に「気づき」が起きることがあります。
「あれ? 〇〇だと思っていたけど、これって、もしかしたら違うのかな?」
しかも、意見を言われたわけではないので、自分を否定されたような痛みも感じなければ、拒否感や反発心も起きません。
素直に質問する力は、さまざまな業務に活かせる
アクションラーニングのセッションを実施すると、このように、「思い込み」がはずれ、問題が自然と解決していきます。
たとえば、今回ご説明した「素直に質問する力」がつくと、こんな業務に有効でしょう。
- マネジャーの部下育成力向上
- 営業担当者・技術担当者の客先での取材力の向上
- チームで考える力の向上
他にも、いろいろな能力の向上に役立ちます。
ちょうど、来週、弊社の勉強会「紀尾井町ラーニングカフェ」で、アクションラーニングのご紹介をしますので、よかったら、ご参加くださいね。詳しくは、こちらをご覧ください。
紀尾井町ラーニングカフェ
http://www.human-respect.co.jp/kojin/000291.html
シリーズ記事
アクションラーニング解説1. 問題が解決しないのは「思い込み」のせい
アクションラーニング解説2. 素直な質問が「ひらめき」を起こす
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