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2016年2月19日金曜日

研修中の質問に答える技術 「研修ファシリテーターのための研修成功のポイント」(2)

塚原美樹
インタラクティブなファシリテーションで
研修を進めることで納得感が醸成できます


「ファシリテーション研修」と検索すると、このキーワードに一致した検索結果がたくさん出てきますが、「研修ファシリテーション」と検索しても、一致する検索結果はあまり出てきません。

「研修講師」というと、やはり「教える人」というイメージが、まだ強いのでしょうか。

「研修ファシリテーター」という概念は、まだ社会的に認知されていないのかもしれませんね。

一方で、昨今の研修の内容を見ますと、企業研修などの場面においては、近年、講師がファシリテーター型の進行スタイルで行うもののニーズが増加しているように思います。

これは、知識インプット型の研修よりも、受講者が「腹落ちした」「気づいた」など、その後の業務において行動変容に繋がり、成果に結びつくような研修が求められていることが、一つの理由だと思います。

受講者に「腹落ちした」「気づいた」となってもらうためには、講師側は、単に内容を解説するだけでなく、腹落ちさせるようなプログラムを戦略的に構成し、ファシリテーターとして研修を進行していかなければなりません。

講師側の難しさという点では、知識インプット型研修に比べると、ファシリテーター型研修は遥かに難しくなり、講師の構成力とファシリテーション能力で、研修の仕上がり状態は相当変わってくると思います。

そこで、このブログでも今後、「研修ファシリテーター」のノウハウについて書いていきます。

研修講師はもちろん、営業担当者、マネジャーなどにとっても、役立つノウハウではないかと思いますので、ぜひ、参考にしてくださいね。


質問を怖がるのは、すべてを知っていなくてはと考えるから


講師として登壇し始め、まだ経験が少ない人が思うの

 「質問されたらどうしよう」

ということではないでしょうか。

これは、講師だけでなく、新人営業担当者なども同じかと思います。

「質問されるのが怖い」というのは、自分が担当するコンテンツや商品について、自分自身も腹落ちして理解できていないことの裏返しの感情ではないかと思います。

 「分からないことを聞かれたらどうしよう」

ということなのですよね。

この問題の解決策ですが、

 「分からないです」

と答えてしまうのが一番だと思います。

要は、

 「分かったふりをしなくてはならない」

と思っているから辛くなるし、怖くなるのであり、「分からない」と手放してしまえば、何ともないことなのかもしれません。

 「そんないいかげんなことで務まるのか」

と思うかもしれませんね。

確かに、事前の準備は必要ですし、コンテンツや商品についてしっかり学習していることは当然のことです。

けれど、万全に準備したつもりであっても、まったく想定していなかった質問が来ることは、必ずあることなのです。

この場合、「すべてを自分が知っていなくてはならない」と考えると、結局は虚勢をはることになります。

虚勢をはればはるほど、相手に見透かされます。

一方で、

 「それは考えてみませんでした。いや、分からないです」

と答えると、相手は案外、納得してくれます。

その上で、単純な知識不足の場合には、

 「ちょっと次回までに調べてみますね」

と宿題とさせていただきます。

もしくは、調べても分からないようなもの、「考え」を聞かれた場合などには、

 「いやあ、これは難しい問題ですね。ううん、考えていませんでした。・・・他の方々はどうお考えになりますか? よろしければ、ちょっとご意見を聞かせていただけないでしょうか。」

のように、自分がすべて回答を出すのでなく、その場にいる人たち全員に問題を共有してもらい、クラス全体、参加メンバー全体でテーマについて考えるというスタイルでファシリテーションをする方法があります。

この方法を取った結果、講師が回答するよりもずっと良い回答が得られることが多々あります。

やはり、一人で考えるより、複数人で考えたほうが、優れた結果が出てくるのです。

講師は「教える」役割でいる時もありますが、「ファシリテーター」という役割になった方が、全員にとっての学習が促進され、役立てることもあるのです。

いかがですか?

こんな風に自分の立ち位置を変えることで、「質問されたらどうしよう」という恐怖心も無くなるのではないでしょうか。

よかったら以下のコメント欄に感想をくださ〜〜い。

2016年2月17日水曜日

SWOT分析で間違いやすいポイントとは? <経営戦略>易しく分かりやすく楽しく解説 ♪(2)

マインドマップで学ぶ「グラフィックMBA」の講座風景


「SWOT分析」で間違いやすいポイントとは?


多くのビジネスパーソンが、研修などで一度は学んだことのある「SWOT分析」。

 「SWOTくらい知っているよ、できるよ」

とお考えかもしれませんが、実際には上手に使えていないケースが多く見られます。

まず、今日はちょっと、復習からしていきましょう。

SWOT分析とは、会社など分析対象の内部環境と外部環境を洗い出し、その状況から会社の戦略方向性を見出す分析手法です。

 Strength(強み)
 Weakness(弱み)
 Opportunity(機会)
 Threats(脅威)

この4つの頭文字を並べたものがこの手法の名称で、SWOT(スウォット)と呼びます。

内部環境とは、会社の内部のことで、Strength(強み)とWeakness(弱み)が内部環境に当たります。

一方、外部環境とは、会社の外部のことで、Opportunity(機会)とThreats(脅威)が外部環境に当たります。

内部環境分析においては、主として、以下について考え、洗い出しましょう。

 人(人材に関すること)
 モノ(設備・土地・建物等に関すること)
 金(財務状況・金融資産に関すること)
 情報(知財・ノウハウ・ブランド・顧客情報・顧客やビジネスパートナーとの関係性など)

外部環境分析においては、主として、以下について考え、洗い出しましょう。

 顧客(ニーズ、現在の状況、未来の状況)
 競合(強み、強みを裏付けるもの、戦略)
 政治的環境(政策、法規制など)
 経済的環境(為替、金利、株価、景気など)
 社会的環境(文化、サブカルチャー、社会的イベント、大きな事件や事故、天災など)
 技術的環境(新技術、新発見、技術の限界など)

研修などで受講者の皆さんにSWOTをやっていただくうちに、間違いやすいポイントがいくつか見えてきたので、今日はそのうちのいくつかについて、お話をしたいと思います。


内部環境と外部環境はしっかり分け、客観的に事象を捉える

 
慣れないうちは、内部環境と外部環境がゴチャゴチャになるようです。

よく見られるのは、機会のところに「自社の商品が売れている」とか、脅威のところに「自社ブランドが浸透しない」といったことをあげるというケースです。

ケースにもよりますが、これらは自社の状況について述べていることで、機会や脅威といったものとは異なることが多いものです。

外部環境はもう少し客観的に考ると良いでしょう。

たとえば、「顧客層が現在〇〇の状況であり、そのために××のニーズがある」とすれば、外部環境の記述として適切と言えます。

客観的ですし、確かに機会という概念を表している事象です。

「自社の商品が売れている」という状況は、そういった外部環境の状況に自社の商品がマッチしたために起きた結果として考えるわけです。

このような思考をするためには、表面的に見えていることについて「なぜだろう?」と考えてみると良いでしょう。

表面に見えていることの背景に何が隠れているか洞察することで、本質的な事象が見えてきます。


強みと弱みはコインの表裏


自社の弱みは出せるのだけれど強みが見出せないというケース。

これは、弱みというよりも「できていないこと」をあげている可能性があります。

強みや弱みというのは、「その会社の特徴的なこと」という意味で捉えると良いのです。

たとえば、「新入社員を採用できていない」という弱みをあげたとします。

これは、よく考えると「社員が古株である」ということを意味しているのかもしれないですね。

古株社員ばかりになっていて、もっと新人を採用しなくては、と考えており、そのできていないことを弱みにあげるというのは、間違いではありません。

けれど、一方で、このことは、「社員がみなベテランである」と捉え直すことができるかもしれません。

もちろん、ケースによって異なりますが、弱みであると考えていることを別の面から捉え直すと、それは強みを表しているということもあるのです。

強みも弱みも、その会社の特徴です。特徴は強みにもなり得るし、弱みにもなり得る。

つまり、コインの表裏みたいな関係なのです。

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今日はSWOT分析について書いてみました。

自社について考える時にも、SWOTは一番大切な分析ですので、参考にしていただければ嬉しいです。

2016年2月8日月曜日

戦略策定プロセスを考える際のポイント <経営戦略>易しく分かりやすく楽しく解説 ♪(1)

マインドマップで学ぶ「グラフィックMBA」
マインドマップで学ぶ「グラフィックMBA」では、
受講者が壁一面にマインドマップを描きながら
戦略策定スキームをケーススタディに当てはめて考えます


このコースは、二日間でMBAホルダーが知っているような経営や戦略に関する知識のエッセンスを身につけ、使えるようにするのが目的で、ケーススタディに取り組みながら、20個以上の戦略フレームワークを学びます。

 SWOT
 4P
 5Forces
 PPM
 アンゾフマトリックス
 ・・・・・

などのビジネスフレームワークは、会社の研修などで学んだことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ところが、フレームワークの名前は知っているし、一つひとつの意味もわかるけれど、それを戦略策定にどう生かしたら良いかが分からない、というお声をよく聞きます。

そこで、今日からしばらく、この講座で私がお伝えしている戦略策定プロセスとフレームワークの活用法をご紹介します。

戦略策定プロセスを考える際のポイント


戦略策定プロセスは上位概念、下位概念を行き来しながら考える

様々な戦略策定プロセスがあると思いますが、私は以下のような順番で行うとスムーズに行くと考えています。

(1) 事業環境を分析し会社の特徴を掴む
(2) 業界を理解し会社の競争優位性を確認する
(3) マーケティングと事業戦略を検討する
(4) ドメインの設定
(5) 社会の洞察から会社の中長期目標を設定する
(6) 重要成功要因(KFS)の設定
(7) KFSを経営の要素ごとに展開
(8) 各業務目標への展開

このプロセスのポイントは、必ずしも上位概念から考えているわけではないということです。

つまり、戦略立案と言うと「ドメインを考えて、事業戦略考えて、商品ごとのマーケティング戦略考えて・・・」というように、上位概念から順番に考えると思いがちですが、これでは上手くいかないのです。

なぜならば、事業はすでに動いているので、現場で今起きていることから考えないと、上位概念を決めることは難しいのです。

「マーケティングを考えてみて、事業戦略を考えてみて、それからドメインを考える」のように、下位概念を考えながら、上位概念を決めていくというのが、良い方法です。

現実的には、上位概念を考えたり、下位概念を考えたり、と行ったり来たりしていると思います。


ドメインは「やりたいこと」ではなく「強み」を起点に考える

ドメインとは「事業領域」という意味で、顧客軸(誰に)・機能軸(何を)・技術軸(どんなふうに)の3軸で事業を定義します。

ドメインを定めておくことで、事業の方向性が明確になります。

方向性を明確にすることで、行うべきことが絞り込まれ、その分野に関するノウハウなどがたまりやすくなり、強みが構築されていくのです。

十分な「強み」があれば事業は継続できますが、「強み」が十分でない場合、他社の方が良い商品を提供することになり、顧客から選ばれず、市場退出となるでしょう。

ですので、ドメインを定め、自社の取り組むべきことを絞り込んでおくことは、とても大切です。

よく、「独立して、やりたいことをやろう」というような掛け声を聞きますが、やりたいことだけですと、強みが構築できない場合には、事業継続ができません。

事業というのは、社会にとって何かしらの価値提供ができるからこそ成立するものなので、「やりたいこと」が誰からも求められていないことだったり、他の会社のほうが強みを持っているものである場合、そもそも、その会社は価値提供できないことになります。

そこでお勧めしたいのが、「やりたいこと」よりも「できること」、つまり「強み」に焦点を当ててドメインを考えることです。

今持っている「強み」を伸ばせること、活かせる事業を選ぶほうが、やりたいからと言って0のものを伸ばすより、ずっと早く成功できるはずだからです。


ビジョンは客観的な社会洞察

上記の戦略策定プロセスでは、「ビジョン」という言葉をあえて使わず、「中長期目標」としました。

そのほうが現実的に考えることができるためです。

もちろん、いわゆる「ビジョン」と呼ばれるものを考えても構いません。

ただ、「ビジョン」というのは、自分勝手な夢のようなものではなく、客観的な社会洞察であるということを理解しておくと良いです。

つまり、世の中の流れをよく観察し、「これからこういうことが起きるな」とか、「今の社会のこういう状況をどうにかしなくては」のような思考が先にあり、それに基づいて、自社がどうすべきか、自社が社会に提供できる問題解決について考えるのです。

単に「売上〇〇億!」というようなものでは、もちろんなく、どのような状態になっていれば、様々な問題が解決できるのか、解決できている状態を具体的にイメージするといったようなことです。

・顧客はどんな状況に置かれ、自社商品によって何を得ているのか

・ビジネスパートナーとどのような関係を築いているか

・社員はどんな能力を発揮しているか

・政府・行政とどのように関わっているか

・投資家や金融機関とどのように関わっているか

・地域社会にどのように貢献できているか

・どのような技術が生まれ、活用されているか

ほかにもたくさん考えるべきことがあるでしょう。

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さて、今日は戦略策定プロセスのほんのさわりの部分だけお話ししましたが、参考にしていただければ幸いです。

次回は、SWOT分析の間違いやすいポイントについてご説明したいと思います。

経営戦略について学ぶときも
講座は常に楽しめるように工夫しています

2016年2月5日金曜日

「話さずに伝える」方法 「研修ファシリテーターのための研修成功のポイント」(1)

2016年1月3日「マインドマップ 目標実現GIFT 1日集中講座」での
塚原美樹の講義風景


講師というのは、話す仕事だと思われていると思うのですが、実は、「良い講師ほどあまり話さない」と私は考えています。

もちろん、話してはいるのですが、「話さずに伝える」方法を知っていて、それを上手く使っているということです。

「話さずに伝えるって、いったい、どういうこと?」

とお思いですよね?

今日はこれについてお話しさせていただきます。

この方法が分かると、プレゼンや講義などが上手にできるようになるだけでなく、社内のマネジメントが上手になったり、営業担当者であればお客様との折衝が上手になります。

とても役立つ考え方だと思うので、ぜひ、興味を持って読んでくださいね。

「話さずに伝える」方法


(1) 場の構造を「1対N」から「Nの集合」に変える

講師が話しすぎている時、場の構造はどうなっているかというと、「1対N」で、こんな感じではないでしょうか。

[講師] → [受講者 受講者 受講者 受講者]

こういう構造の場になってしまうと、受講者は受け身の立場で、講師から何かを受け取るだけになってしまいます。

「講師が話していることが正解です」という構図です。

この場合、受講者の反応は以下のいずれかではないでしょうか。

・A:講師の言うことに納得する
・B:講師の言うことに批判的な気持ちになる。
・C:講師の言うことがよく分からない。
・D:講師の言うことを鵜呑みにする。

もちろん、講義の中ではこういうシーンもあるのですが、この構造だけですと、全員に納得してもらうことができません。

そこで、場の構造を次のように変えるとどうなるでしょうか。

[受講者 受講者 受講者 受講者]
        ↑
        [講師]

ちょっと分かりにくい図で申し訳ないのですが、この図は、受講者が各々情報発信をしており、相互に協力しながら考えているのを、講師が下からサポートしているという構造を表しています。

これは、ファシリテーター型講義のイメージです。

この場合には、受講者は受け身の立場ではなく、能動的な立場になっています。

受講者は自分が「考えること、理解すること」に積極的に参画しているため、納得しやすくなります。

では、どうすれば、このような場の構造を生み出せるのでしょうか?

(2) 受講者に話してもらう

場の構造を、受講者が参画するようなものにするために、講師がやるべきことは「問いかける」ということです。

「このテーマについて、皆さんはどうお考えになりますか?」

いきなり、ここで誰かを指すと、指された受講者は引いてしまいますので、注意してください。

自分の意見を言いやすい雰囲気づくりが大切です。

「では、お隣の人と話してみていただけますか?」

まず、自分の考えを言いやすい、隣の受講者の方と意見交換をしていただきます。

「では、今度は全体共有したいのですが、どんな話が出ていたか共有していただけますか?」

ここでも、「あなたの意見を言ってください」ではなく、「どんな話が出ていたか共有してください」としています。

自分の意見ですと、「間違っていたらどうしよう」のような気持ちが働き、言いにくいものですが、出ていた話をするだけで良いのなら、気が楽ですよね。

受講者の方が発表してくれたら、まずお礼をしましょう。

「ありがとうございます」

その上で、いただいた意見をもとに受講者全体に話を広げていきます。

「Aさんの今の意見について、Bさん、どのようにお考えになりますか?」

「反対の意見の人は?」

「同じ意見の人は?」

「よかったら、あなたの意見を聞かせてもらえませんか?」

こんな感じです。

このようなファシリテーションをしていると、受講者同士が話し始め、お互いに意見交換をしあうという場を作ることができます。

講師が一方的に正解を話すのではなく、「受講者が共に考える」という場が生まれます。

(3) 受講者が考えたことをまとめる

ある程度、十分に受講者同士の話し合いができ、受講者がテーマに対して積極的に考えることができたと思ったら、最後に、受講者から出てきた話のポイントを講師がまとめます。

この時に、講師が行っているのは「繋げる」という作業です。

受講者は様々なことを話しますので、必ずしも、こちらが伝えたいこととは違うことも出てきます。

受講者から出てきた色々な話の中から、学習してもらいたいポイントに繋がるものを探し、上手く繋げるようにしてまとめるのです。

「つまり、ポイントは〇〇、××、●●ということでしょうか。Aさんの話は〇〇そのものですね。Bさんの意見は××と関係していましたね・・・・」

時には、こちらが想定していた以上のものが受講者から出てくることもあり、この方法で講義を進めると、大変な効果が現れることがあります。

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今日は、講義というシーンを通じて、「話さずに伝える」方法についてお話ししましたが、これは営業活動のシーンや日常の会議の場などでも使えると思います。

皆さん自身の体験に結びつけて、考えてみていただけたら嬉しいです。

2016年2月4日木曜日

問題解決は全体を見たときに起きる?

2016年1月3日「マインドマップ 目標実現GIFT 1日集中講座」 での塚原美樹の講義風景
2016年1月3日「マインドマップ 目標実現GIFT 1日集中講座」
での塚原美樹の講義風景

マインドマップに関連したとても重要な概念に「ゲシュタルト」というものがあります。

これは、全体性という意味です。

全体というのは面白いもので、部分の総和とは異なります。

たとえば、次の絵を見ると、皆さんは白い四角を認識すると思いますが、実際には白い四角はありません。

全体を見た時には白い四角が見えるが 部分を見ている時には白い四角は見えない
全体を見た時には白い四角が見えるが
部分を見ている時には白い四角は見えない

4分の3の円形が四つあり、それぞれの配置の関係により、白い四角が見えるのです。

このように、全体を見ることで初めて見えてくるものというのがあり、私たちが頭を働かせるときにも、全体性を意識することは、効果的な思考のための重要な鍵になってきます。

全体を見ることで、新たな発想が湧きやすくなったり、本質的な問題に気付きやすくなります。

「ゲシュタルト」という言葉は「ゲシュタルト心理学」などで知っている人も多いのではないでしょうか。

ゲシュタルト心理学の創始者の一人と言われるヴォルフガング・ケーラーは、二匹のチンパンジーを使った実験を行った結果から「洞察学習」という考え方を提唱しました。

ケーラーはサルタンという名前のチンパンジーを部屋の中に入れます。

部屋の天井にはバナナが吊るされており、サルタンはそのバナナを取ろうとします。

やがてサルタンは、部屋の隅に置かれた箱に注目し、その箱を吊るされたバナナの下に移動させ、その上に乗ってジャンプすることで、バナナを手にしました。

ケーラーは、このサルタンの実験の様子を見ていたもう一匹のチンパンジー、ラナにも同じ実験をします。

ラナはサルタンの真似をしたのですが、バナナを取ることはできませんでした。

皆さんはラナは何をしたと思いますか?

そうです、ラナは箱を移動せずに、バナナが吊るされた位置とは関係ない場所に箱を置いたまま、箱の上でジャンプをしたのです。

つまり、ラナはサルタンのしていることの部分しか目に入っておらず、全体が見えていなかったのですね。

この様子を見て、ケーラーは気付きます。

「問題解決は全体を見たときに一気に起きるのだ。」

確かに、部分しか見えなかったラナには問題解決はできませんでしたね。

これがケーラーの考えた「洞察」ということです。

このように、全体を見るということは、深い洞察を得ることに繋がります。

マインドマップは全体を見渡せるノートであるために、この洞察的思考が促されやすいのです。

今、身近に起きている問題について、とにかくマインドマップを書いてみましょう。

思い浮かぶことを整理せず、連想のままにどんどん書いて、さらに少し視点を変えて、また、どんどん書いてください。

もう出尽くしたと思ったら、マインドマップを少し俯瞰して眺めてください。

眺めているうちに、何かが分かってくると思います。

今まで見えていなかった繋がりに気づいたり、全体の中で何が大事なのかに気づく。

こんな風に、マインドマップを使って問題について考えることで、本質的な問題の発見、気づき、解決策の想起があるはずです。

そのコツは「全体を見る」ことです。

マインドマップを俯瞰することで
新たなひらめきや本質的な問題の発見が起きます


2016年2月3日水曜日

絵が苦手でもマインドマップはかけますか?

壁全面にマインドマップを描きながらの研修
壁全面にマインドマップを描きながらの研修は学んでいることが見える化して非常に効果的

マインドマップの講座を開催していると、

 「絵が苦手なんですけど、それでもできますか?」

というお声をよくいただきます。

多くの人のマインドマップの第一関門は「絵が苦手なこと」。

絵が苦手というだけで、マインドマップから遠ざかってしまう。

これは大変残念なことで、ほとんどは誤解なのです。

マインドマップは確かにイメージを使いますが、絵を上手く描くのが大事なのではなく、絵などのイメージを使ったほうが、頭が上手く働くから使っているということなのです。

なので、このようなお問い合わせに対して、私はいつも「大丈夫です」と自信を持ってお答えしています。

何を隠そう、実は長年インストラクターをしている私自身が、絵を描くのが苦手なのですから、ご安心ください。

しかしながら、絵が苦手、絵が下手であったとしても、イメージを使うというのは案外、スゴい成果をもたらしてくれます。

私の普段使っているノートに描かれたマインドマップには、ネットにこそ公開できませんが、本当に笑ってしまうほど下手くそな絵が描かれています。

だから、大丈夫。

絵が上手でなくても、マインドマップを上手く使えるようになりますし、絵を描けるようになります。

では、マインドマップにイメージを描くとどのような効果、効用があるのか。

そして、絵が苦手な人はどのようにして、イメージを使えば良いのか。

これについて、今日は解説したいと思います。


(1)イメージを描くことで仕事のスピードが上がる


普段は気づきにくいかもしれませんが、私たちは日々、イメージに囲まれ、イメージに助けられて生活し、仕事をしています。

たとえば、日常生活の中で分かりやすいのは、交通標識です。

「止まれ」の標識は赤い逆三角形で、白字で文字が書かれています。

また、「一方通行」の標識は青い長方形で、白字で矢印が書かれています。

もし、双方の標識が、白い正方形で、どちらも黒字で「止まれ」や矢印が書かれていたらどうでしょう。

たぶん、見分けがつかず、ドライバーは咄嗟の反応ができませんよね。

色や形がそれぞれ違うからこそ、認識がしやすく、素早く反応できるのです。

このように、私たちは、文字よりも色や形に対してのほうが素早く反応することができます。

では、ビジネスシーンにおいても、同じように色や形などのイメージを生かすことはできるのでしょうか?

私は、仕事においてもイメージは大いに活用できると考えています。

たとえば、プレゼンをする際の手元メモ。

すべてモノクロの文字で書かれた手元メモだったとしたら、どうなるでしょうか?

 「あれ? 次は何を話すんだっけ?」

と思った時、手元メモに目をやって、次の箇所を探すのにかなりの時間がかかるはず。

これでは役に立ちませんよね。

一方で、マインドマップで手元メモを作っていたとしたら・・・。

たぶん、ほんの一瞬、マインドマップをチラッと見ただけで、

 「ああ、あれを話すんだった!」

と掴むことができ、プレゼン中にもあまり下を見ることなく、オーディエンスにアイコンタクトを取りながら話を進めることができるはずです。

なぜなら、マインドマップはイメージを活用しているからです。

まず、一枚のマインドマップそのものが一つの絵に見えます。

その絵のどのあたりに何を書いておいたか、絵として思い出すのが容易です。

そして、マインドマップの各所に絵、アイコン、記号などのイメージが描かれていれば、そのイメージが目立って、チラッと見ただけで目に飛び込んできます。

プレゼン以外のビジネスシーンでも、イメージを活用したマインドマップは大いに役立ちます。

人の話をメモする時、会議のファシリテーション、本などからの情報収集・・・。

上手な絵である必要はありません。

とにかく、「視覚的に表現する」ことをしておけば、あとから見やすくなるのです。


(2)絵が苦手な人は簡単なアイコンから始める


もし、あなたが絵が苦手だとしても、何も描けないわけではなく、ちょっとしたアイコンくらいは描けるのではないでしょうか。

たとえば、下記の写真は、私が板書したアイコンの例です。

近年では仕事はほとんどメールやチャットで進められていますので、仕事のことを考えるにしても、メールやチャットという言葉はよく出てきますよね。

私はメールは封筒のアイコン、チャットは吹き出しのアイコン、というように決めて使っています。

また、ミーティング、打ち合わせなど、仕事の中でよくあるイベントを簡単なアイコンにしておくと便利です。

私はとても簡単なアイコンでこれらを表すようにしています。

どうですか?

決して上手な絵ではないですよね。

でも、こういうアイコンを使うことで、パッと見た時に分かりやすく、瞬時に捉えることができるのです。

こういうアイコンを自分でいくつか作っておけば、マインドマップをかく際にサッとイメージを入れられるようになります。

 「絵を描かなくては・・・」

のように不自由な考えにとらわれず、楽しく、気楽な気持ちでアイコンをマインドマップに入れてみてください。

これでOK!

あなたも、イメージで考え、イメージで表現するマインドマッパーです!


マインドマップで使うアイコン
絵が苦手な人がマインドマップにイメージを入れる際には
簡単なアイコンから始めると上手く行きます。