2017年1月5日木曜日

ゴール状態のイメージを職場で共有するって?



前回、仕事の「すりあわせ」についてお話ししましたが、その後も、「すりあわせほど難しいことはないかもしれない」思うような出来事が、私の周りでも起きています。

 「え、なんでそうなってるの?」

 「わかっていなかったの?」

 「前にも言ったじゃない」

上司の立場からすると、こんな風に思うことが、繰り返し、繰り返し起きるのです。

前回は、ゴール状態のイメージの共有をQCD(Quality 品質・Cost コスト・Delivery 納期)のバランスイメージの共有で行いましょうという話をしましたが、どうもそれだけでは上手くいかないことが多々ありそうです。

たとえば、客先への資料を用意する仕事を頼まれたとします。この時、確認しなくてはならない仕事のゴールイメージは何かというと・・・

 ・何を資料に入れなくてはいけないのか(Quality)
 ・どんな形で仕上げなくてはならないのか(Quality)
 ・必要部数(Quality)
 ・資料づくりにかけて良いコスト(Cost)
 ・いつまでに用意するのか(Delivery)

ということになります。
常連のお客様で、毎回、資料を用意していると、

 「先方は8名だけど、毎回、6人しか出てこないから今回も6人分かな」

という感じで、Qualityのうちの必要部数をしっかり確認せずに、仕事が進んでしまうことがあります。

上司の側は、

 「しっかり用意してください」

と言うのみです。

結局、8人分必要なのに6人分しか資料が用意されておらず、上司がびっくりする。

こんなことはありませんか?

上司の言い分は、

 「資料の準備は任せているのに、なぜ、人数分がないんだ。なぜ勝手に6人と決めたんだ」

というもの。

一方で、部下の言い分は、

 「いつも6人しか来ていないから6人だと思ったんですよ。8人だと言ってくれればいいじゃないですか」

二人とも相手の仕事ぶりに納得ができません。

なぜこんなことになってしまうのでしょうか?


任された仕事のゴール状態の確認は誰が行うべきか

この問題の根本にあるのは、仕事の「責任」をどちらが持っているかが不明確であるということです。

ゴール状態が共有されていないために、すれ違いが起きているのですが、では、ゴール状態を明確にしなくてはならないのは、誰でしょうか。

組織によって状況が異なるので、いちがいには言えませんが、若い人たちに知っておいていただきたいこととして、

 「上司の指示は、詳細まで完全な形で出されるものでは無いので、指示を受けた仕事のゴール状態を自ら確認しなくてはならない」

ということです。

組織においては、職責が高い人は、さまざまなことを見ています。上長がすべての仕事を一人で行うことは当然できないので、部下に仕事を任せるわけですが、上長の指示は、方向性を示すことが多く、事細かに出されるものではないのです。

一方で、上長は組織の存続や成長のための判断をしていますので、最終的には、ゴール状態は上長の意向に沿う必要があります。

部下の側が

 「上司が細かい点まで指示をしないから悪い」

と思ってしまうと、上長は

 「こちらが事細かく指示しないとできないのであれば、学生アルバイトで十分だ」

と思うでしょう。組織を動かしていくために、上司が必要とするのは、自分で考えて自らゴール状態を確認し、動くことができるメンバーです。

仕事を任された部下の側が確認しないと、上長が事細かに詳細まで指示をすることは、まずどんな組織でもありえないと思ってください。

つまり、仕事のゴール状態は、任された部下の側が上司に確認するのが基本です。


自分の責任の仕事であるとコミットできているか

さて、ゴール状態が不明確な時には、部下が確認するのが基本であることはお分かりいただけたと思いますが、では、「責任」はどうなのでしょうか。

これは、上長と部下との事前の話し合いにより、お互いの責任の範囲を明確にしておかなくてはなりません。

単純作業のアルバイトなどであれば、何をしても責任は問われないということもあるでしょうが、責任を持たない仕事しかしないようでは、周囲からも信頼されませんし、長続きしないはずです。

職責の高い人は、部下の仕事が不十分だったのが原因だとしても、発生したコスト上の損失や部門全体のパフォーマンスなどについては、責任を持ちます。部門全体の責任を持ち、部門を上手く運営するのが上長の仕事です。

お客様への責任も、上長にあります。たとえば、先ほどの資料が足りない例の場合には、上長がお客様に謝らなくてはならないことになりますし、もし、コストが2倍かかったとしても、最終的には上長が用意する必要があります。また、コストが増加したことによる責任も上長が取ります。ここで、上長がお客様に対して、または上長自身の上司に対して、部下のせいだと言ってしまうのは、自分の責任にコミットしていないことになります。

では、部下には責任がないかというとそうではありません。部下は上長の考えるゴール状態を確認し、それに従って仕事を遂行する責任があります。この責任は誰に対するものかと言えば、社内の同僚や上長に対して、責任があるということになります。ちょっと厳しく感じるかもしれませんが、会社に勤めてお給料をもらっているのであれば、ある意味、会社に責任があるとも言えます。もちろん、一人ですべて背負う必要はありませんが、自分の責任を放棄してしまうようでは、その組織にとっては不要な人材ということになってしまいます。

責任については、これらが基本ですが、これらのことは分かっていても、先ほどの例のようにゴール状態の共有ができていないまま仕事が進むことは発生します。それは、ゴール状態はQCDバランスのイメージだと一言で言っても、具体性が弱いからです。


責任の範疇を具体化するために仕事を分解する

上司と部下のゴール状態のイメージがすれ違っていた場合、仕事はスムーズに遂行されず、上司が部下を叱ることがあると思います。

部下の側としては、

 「私はこれだけやっている、一所懸命仕事しているのに、なぜ怒られるのだ」

と思いますよね。ですが、上司も、部下が一所懸命仕事をしているのを評価していないと言っているわけではありません。

さきほどの例で言えば、部数の確認を行わず、勝手な思い込みで部数を決めてしまったことが問題なのです。つまり、ゴール状態を勝手に決めてしまったために、上司とのすれ違いが起きたのです。

こういうことを避けるためには、自分の担当する仕事を細かい作業に分解すると良いでしょう。

資料づくりという仕事であっても、ゴール状態を明確にするためには、

 ・何を資料に入れなくてはいけないのか(Quality)
 ・どんな形で仕上げなくてはならないのか(Quality)
 ・必要部数(Quality)
 ・資料づくりにかけて良いコスト(Cost)
 ・いつまでに用意するのか(Delivery)

これだけ確認しなくてはならないのです。
このうちのどれかを思い込みで勝手に決めてしまうと、上司とのすれ違いが起きるでしょう。

ですので、日々の仕事を気持ちよく行うためには、まず、自分の目の前の仕事を細かい要素に分解してみてください。
自分は責任を持ってやっているつもりでも、要素に分解した際に抜けが発生していたのでは、責任を遂行したことにはなりません。

つまらないことで、仕事がストップしないように、日頃から自分の仕事の責任の範囲を確認するようにしましょう。

さて、ヒントになりましたでしょうか。
あなたの仕事はいかがですか?
ゴール状態のイメージを仕事の仲間と共有できていますか?

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